大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和32年(ネ)457号 判決

主文

本件控訴は之を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

控訴代理人は「原判決中主文第二項の部分を除きその余を取消す。原判決記載の不動産につき控訴人が被控訴人に対してなした登記官吏の処分に対する異議申立を却下する旨の昭和三十年十二月十日附決定は之を取消す。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、提出、援用の証拠書証の認否並請求に対する当裁判所の判断はすべて左記に附加又は訂正する外原判決記載の通りであるからここに之を引用する。

一、控訴代理人は甲第七号証を提出し被控訴代理人はその成立を認めた。而して、同号証によるも原判決の判断を左右することが出来ない。

二、井上民三郎からなした控訴人の本件土地に対する所有権移転請求権保全の仮登記、及本件土地建物に対する各所有権移転登記の各抹消登記申請と河原崎から井上民三郎に対する本件土地建物についての所有権移転登記申請が土地及建物につき夫々同一受附番号を以て受理せられたことは成立に争のない甲第二、三号証によつて之を認めることが出来る。

三、原判決理由欄四枚目表八行目「同第百四十四条」の次に「同第百四十六条」を挿入する。

四、本件建物についての控訴人主張の所有権移転請求権保全の仮登記が昭和二十九年六月四日なされたものであり、之に対する井上民三郎の処分禁止の仮処分のなされた昭和二十九年七月一日以前であることは当事者間に争がなく、従つて、若し控訴人の建物に関する昭和二十九年十月二十一日附売買を原因とする所有権移転登記が右仮登記の本登記申請をなしたものとすれば登記官吏が右所有権移転登記を抹消したことは違法であること明白である。然しながら本件の場合において右登記が前記仮登記の本登記申請としてなされたものでないことは成立に争のない甲第二、三号証により之を肯認し得るからこの点よりするも登記官吏のなした処分を違法となすことが出来ない。

三、原判決はその第二の訴に関する事実の摘示及理由を掲げているがこの点については控訴人は不服の申立をなさず、当審の審判の範囲に属さないからこの部分の記載を除く。

以上の理由により控訴人の本訴請求は失当であるから之を棄却すべく、之と同旨に出でた原判決は相当であつて本件控訴は理由がないから之を棄却し民事訴訟法第三百八十四条、第八十九条、第九十五条を適用し主文の如く判決する。(昭和三三年二月一七日名古屋高等裁判所第二部)

(別紙目録は省略する。)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例